静岡地方裁判所 昭和50年(手ワ)169号 判決 1976年4月23日
主文
一、被告らは合同して原告に対し、金二〇八万六、六三三円及びこれに対する昭和五〇年一一月二五日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二、訴訟費用は、被告らの負担とする。
三、この判決は、仮に執行することができる。ただし、各被告において金一〇〇万円の担保を供するときは、右仮執行を免れることができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文一、二項同旨の判決並びに仮執行の宣言を求める。
二 被告揖斐川鉄興株式会社(以下揖斐川鉄興という)の請求の趣旨に対する答弁
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決並びに仮執行免脱宣言を求める。
第二 当事者の主張
一 請求の原因
(一) 原告は、別紙手形目録記載の約束手形(以下本件手形という)一通を所持している。
(二) 被告揖斐川鉄興は、本件手形を振り出した。
(三) 訴外アトム産業、被告平田工業株式会社(以下平田工業という)は、揖斐川鉄興の署名のある本件手形にそれぞれ拒絶証書作成を免除して、順次裏書譲渡をした。
(四) 本件手形の裏面には、裏書人被告平田工業、被裏書人原告なる記載がある。
(五) 原告は本件手形を満期に支払場所に呈示した。
(六) よつて、原告は被告らに対し、合同して本件手形金二〇八万六、六三三円及びこれに対する昭和五〇年一一月二五日から支払済みまで手形法所定の年六分の割合による利息を支払うことを求める。
二 被告揖斐川鉄興の請求原因に対する認否
請求原因第二及び第五の事実は認め、その余の事実は不知。
三 被告揖斐川鉄興の抗弁
(一) 被告揖斐川鉄興は、被告平田工業に対し既に弁済期の到来している商品売掛代金二、九三〇万九、八〇八円を有している。
(二) 被告平田工業は、原告に対し定期預金債権金一、九二五万七、〇〇〇円及び定期積金債権金七二九万八、〇〇〇円を有する一方、原告に対し本件手形の買戻債務金二〇八万六、六三三円を負担している。
(三) 被告揖斐川鉄興は、前記被告平田工業に対する売掛金債権を保全するため、同被告に代位して昭和五一年一月二四日右(二)の債権をもつて同社が原告に負担する前記(二)の手形買戻債務と対当額で相殺する旨の意思表示をなし、右意思表示はその頃到達した。
四 抗弁に対する原告の認否
抗弁事実のうち(一)は不知。(二)のうち、被告平田工業が原告に対して有する預金債権の存在及び被告平田工業が原告に対して本件手形の買戻債務を有することは認めるが、右預金債権の額は争う。(三)のうち、相殺の意思表示が到達したことは認めるが、自働債権は弁済期未到来である。
五 被告平田工業の応訴状況
被告平田工業は、公示送達による呼出を受けたが、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の書面を提出しなかつた。
第三 証拠(省略)
理由
一、被告平田工業関係
1 弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一号証によれば、原告主張の各事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
2 右事実によれば、原告の被告平田工業に対する本訴請求は理由がある。
二、被告揖斐川鉄興関係
1 請求原因第二及び第五項の事実は当事者間に争いがない。
2 成立に争いのない甲第一号証及び弁論の全趣旨によれば、請求原因第一、第三ないし第四項の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
3 被告揖斐川鉄興が原告に対して相殺の意思表示をしたことについては当事者間に争いがない。しかしながら、相殺適状にあつたと認めるに足りる立証はないから、被告揖斐川鉄興の抗弁は認められない。
4 右事実によれば、原告の被告揖斐川鉄興に対する本訴請求は理由がある。
三、結論
よつて、原告の本訴請求は、いずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条二、三項を適用して、主文のとおり判決する。
(別紙)
手形目録
金額 二〇八万六、六三三円
満期 昭和五〇年一一月二五日
支払地 岐阜市
支払場所 株式会社大垣共立銀行千手堂支店
振出地 岐阜市
振出日 昭和五〇年六月三〇日
振出人 被告揖斐川鉄興株式会社
受取人及び第一裏書人 訴外アトム産業
第二裏書人 被告平田工業株式会社